腕木式信号機の構造

腕木式信号機を転換させる方式です。機械式4種類と電気式1種類です。この5種類の中で、遠距離操縦となる遠方信号機用として考案されたものが4種類になりますが、数的には少数です。

■1条鉄索式信号機(単線式)

信号機と信号てこを1本の鉄索(ワイヤー)で結び、てこの機械力で現示転換する方式です。ほとんどの機械式信号機はこの方式によるものです。一般的に、信号てこと信号機の距離は800mが限界とされています。
てこを反位に転換すると、鉄索が引かれ、信号機下部の重錘カンを引き上げます。重錘カンはエスケープクランクと一体になっており、エスケープクランクの機構によって接続カンを押し上げ、信号腕木を45°降下させます。
次にてこを定位に戻すと、鉄索の張力が失われ重錘カンが降下します。これによって接続カンも降下し、信号腕木を水平に戻します。
鉄索が切れた場合、 重錘カンは重力によって降下したままになるので、信号腕木は水平を保ち、安全側の停止現示となります。
寒暖の差による鉄索の伸縮は、現示転換不良となります。このため、鉄索の伸縮にあわせてターンバックルの調整が必要となります。

■2条鉄索式信号機(双線式)

信号機と信号てこを2本の鉄索(ワイヤー)で結び、てこの機械力で現示転換する方式です。1条鉄索式では操縦距離が長くなると鉄索の弛みが増え 転換不良になりやすく、この欠点を補うための方式です。遠方信号機はほとんどこの方式ですが、大停車場では場内や出発にも使用されていました。一般的に、 信号てこと信号機の距離は1000mが限界とされています。
鉄索は常に簡易調整機によって緊張しており、鉄索は信号てこのドラムと安全装置を往復して結ばれています。この2本の鉄索の引き・帰りによって信号現示を転換させます。
この構造では、鉄索切断時に安全側=停止現示にさせることはできないので、安全装置が必要となります。鉄索切断によって鉄索緊張が弛緩すると安全子の掛金が外れ、動作棒が落下したままの状態、つまり信号腕木が水平を保つことになります。
寒暖の差による鉄索の伸縮は簡易調整機に吸収され、常に緊張を保つことができます。

■D形信号機

一番新しい方式です。信号てこと信号機の距離が長く、2条鉄索式でも操縦困難な場合に採用され、主として遠方信号機に用いられました。鉄索は2 条で、信号機柱に円形エスケープクランクが設置されます。鉄索はホイールに結ばれ、信号てこによる引き・帰りの動作でホイールを回転させます。ホイールに はカム溝があり、これによって動作棒が上下し、信号腕木を転換させます。
鉄索切断時は、ブリケージロック装置により、定位なら定位に固定、反位なら定位に戻す機能が備わっています。この方式は、なめらかなカムの摺動で作動する ため転換時の衝撃が少く、タマ切れ事故対策にもなります。この変形版(1条鉄索で一端を錘にしたタイプ)とともに常時点灯である機械単灯形信号機にも多く 用いられました。

■鉄管式

ごく一部の第2種機械連動装置の停車場で試用された方式です。第2種機械連動装置では信号機転換用の鉄索が連鎖関係 転てつ器まで迂回し操縦距離が非常に長距離になることがあります。それによる鉄索弛緩等の問題を、選別器用連動機を使用して転てつ器用鉄管と共用し導程の ほとんどを鉄管にして解決した方式です。
鉄索よりも動作の信頼性が確実に向上しますが、操縦距離や信号機と転てつ器との関係などの一部の条件でのみ有利な方法です。

■A形電気信号機

この方式は唯一機械式ではなく、電動機によって信号腕木を転換させるものです。極めて遠距離の遠方信号機に多用されました。また自動閉塞区間における腕木式信号機にも類似した機構のものが用いられていました。
場内信号機に添装される腕回路制御器(アームコンタクト)の電気回路によって制御されます。つまり、場内信号機が反位になれば腕回路制御器の接点が構成さ れ、A形電気信号機の制御リレーが動作して電動機を回します。所定の回転角度に達すると、電動機への回路は断たれ同時に電磁石への回路が構成され、それが 励磁されるによって反位の角度に保持します。場内信号機が定位に戻ると、腕回路制御器の接点が開放されることにより電磁石への回路が断たれて無励磁とな り、信号腕の自重によって水平=定位に戻ります。
この方式の信号腕木の寸法形状は、機械式とは若干異なります。